• 写真:渞忠之
  • モデル:前田新奈、末吉ひろし
  • ヘアメイク:赤木英二
  • 企画、衣裳:さとうみち代

 

身体の記憶の古層

人類が体温維持の機能を自身の体毛から「着るもの」に託してから今に至るまで身体と「着るもの」の関係は変わっていない。しかし「着る」事に「装い」が加わったのはいつからだろう?「装う」行為の始まりは何だったのか?装うことと踊ることの間に何か関係はなかっただろうか?
今回のプロジェクトで私が衣裳を通して示したい事は、身体の記憶の古層である。特に踊りの衣裳を生業にしている私にとって身体の記憶は即ち「着るもの」の記憶と言っても良いのではないだろうか。時間を遡って私達はどこから来たのか、どの様な風土の上に立っている身体なのか。「そもそも」という視座に立ち、身体と着るもの、その始まりと時代が変わっても変わらないものを確認したい。

「装う」と物語

様々ある物語の中で、登場人物達は他のモノに変身したり動植物と語り合い、時には死者や妖怪とも話をする。さらには易々と時間を超越する事も出来る。シャーマンと呼ばれる人達は特別な装いをし、トランス状態になる事で神や精霊と交わりお告げを受ける。当たり前の様に記される物語の想像力は未開性の特徴として考えられてきた呪術的、神話的思考から生まれてきたものである。しかしこの想像力は過去の産物としての「野蛮人の思考」ではなく我々現代人の日常の知的活動や芸術活動にもその片鱗を見せている。

プロジェクトタイトル『土着と越境』について

アジア人、ヨーロッパ人、アフリカ人、イエロー、ホワイト、ブラック。カテゴライズされる条件によって呼び名は様々に変わるが元となるのは場所であったり身体的特徴だったりする。しかしその大元を辿れば地球上のヒト(現生人物、ホモ・サピエンス・サピエンス)の祖先はアフリカで誕生し、その後世界中に伝播していったとするアフリカ単一起源説が通説となっている。同種であったはずのヒトを分かつものは何だったのか。土地に根付くことはその土地の環境と共に生きていく事である。環境はヒトの骨格や肌を形成し、風土を生み風習や神話が生まれた。私たちの身体や思考の源泉となった「根付くこと」と「移動すること」これらの言葉をタイトルとした。